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オン・ザ・キャンバス
「機会があればここでも眠ってみたいもんだね」
二、三年前の、春だか秋だかの俺の言葉だ。
場所はまさにこの会場のキャンバスの上で、なにかのチャリティーでだれかとエキシビジョンマッチを行った後、トークショーで日々の睡眠時間について語っていた時のセリフだったと思う。
客たちは手を叩いて笑った。俺を倒せる、眠らせることのできるボクサーなんていない、という考えを俺たちは共有していたのだ。
そしてその二、三年後、俺の眼はキャンバスの真上にある天井を捉えていた。初めての景色だ。照明機器の光をまともにくらっているのだが、眩しいとは感じなかった。そのまま平気で熟睡できそうだった。
セコンドや客の声は聴こえなかった。視界の端にカウントを数えているのであろうレフェリーの手がチラチラと映っていた。相手の姿は見えなかった。ニュートラルコーナーで休んでいるか、雄叫びをあげているのだろう。痛みも焦りも意識が途切れそうな気配もなく、こんなものなんだろうかと思った。
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