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もうそれ以上は走れなくなって、灯雅は転んでしまう。手に持っていたスマホが手を離れてアスファルトを滑っていった。
恐怖に顔を青くして、背後を振り返った。
暗い深夜の村の中は、そこになにかが潜んでいるような気配を感じさせた。が、肝心の渦は見えなかった。見えなかったが、同時に、いっしょにいたはずの友人二人も消えていた。渦から出てきた腕に捕まったのかと思ったが、おそらく別の方向へ逃げてしまったのだろう。連絡を取ろうと、落としたスマホを拾い上げた。
友だちに電話をかけようとして人差し指をスマホにタッチしたとき、ふいになにかの影が入ってきて、顔をあげた。
「!」
灯雅は息をのんだ。
目の前にだれかがいた。しかし、それは友人ではない。顔形がちがうと以前に、空中に浮かんでいたからだった。その背後には黒い渦があった。
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