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その怪現象のウワサは、二人の兄弟の耳にも届いていた。
曰く、「蚊柱のような靄が出現して、人を追いかけてくる──」
なんともホラーなウワサ話だ。
法隆寺周辺ということもあって、聖徳太子の霊だとかいう子供じみた尾ひれもついていたが、もちろん、そんなことを真に受けるほど二人とも幼くはなかった。だいたい千年以上も昔の霊など、どれだけ怨念が深いんだか。
とはいえ、その怪現象を見てみたい、という気持ちは心の底にくすぶっていて、なにかの機会があればたしかめに行きたいという、少年らしい無邪気さを捨てられずにいた。
そんなとき、
「ちょっと行ってみようぜ」
という、友人の言葉がかかり、なんとなくうなずいてしまったのは、魔が差したとしかいいようがなかった。
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