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「ほんとに行くのかよ」
呆れ顔でそう言ったのは、兄の麦沢秀電だった。県立高校二年で、弟とは三歳ちがいである。弟から最初その誘い話を聞いたときは、話半分でばかばかしいと一蹴していた。
「まぁ……」
兄に真顔でそう言われると、なんとなく照れくさい気持ちになって、弟・灯雅は生返事するしかなかった。
「期末試験も終わったことだし、べつにいいかなと思って──」
だから少し言い訳じみたことを言ってしまう。
「肝試しか……小学生以来だな。ま、親に外出がバレそうになったら、適当に言っといてやるよ」
感慨深い口調で兄は懐の深いところを見せたが、やや恩着せがましかったかもしれない。
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