03 彼女の名はエミル

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「ブレーカーが落ちてしまう」 「は?」 「充電中なんだ」 「充電って……ロボットなのか?」  信じられない、といった表情の秀電。 「どれどれ……」  寝ている女の子の傍らに片膝をつくと、ケーブルをたぐりよせ、Tシャツの裾をめくった。 「ちょっとにいちゃん!」  弟は兄の手をつかんだ。 「なにをする気だよ。それはまずいだろ」 「人間じゃないんだろ?」 「いや、でも……」  秀電にとってはマネキン人形にも似た物体(モノ)にすぎないが、灯雅にとっては一度会話を交わした「生きている」存在だった。どうしてもそれなりの扱いになってしまう。  そのとき、彼女が目を開いた。首を起こし、二人の男子を見た。
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