03 彼女の名はエミル

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「というより、故障だろうな」  冷静な声音の秀電は、エミルを見る。  どう見てもロボットには見えない。ぞっとするほどよくできている。どれほどのテクノロジーが使われているのか、現代の技術では不可能だろう、よしんばなんとかつくりあげたとしても、莫大な費用がかかるにちがいなく、それが黒い渦から出現したというのも、なにがどうなっているのやら。  未来からやってきた、というのが可能性としてありそうに思えたがそれとて荒唐無稽だった。ハリウッド映画じゃあるまいし。もっとも、荒唐無稽というなら、エミルの存在そのものが荒唐無稽だ。もはや常識は消し飛んでいる。  しかもエミルはそれらの謎のすべてに解答できなかった。きれいさっぱり忘れていた。
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