04 字川玲花は想定外

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 ぜったいにこのクローゼットから出ちゃだめだよ──。  翌朝、そう言い残して家を出たものの、麦沢兄弟は不安がどうにもぬぐいきれない。 「だいじょうぶかなぁ……」  と、徒歩で中学校へ向かう弟・灯雅に、 「おれも心配だが、ここは信じるしかないからな」  自転車に乗って駅へと向かおうとする兄・秀電は腹をくくっていた。  ロボットなら、退屈を持て余して勝手に行動せず、いつまでもじっとしていられるだろう。それを期待するしかなかった。  幸いすでに両親とも働きにでて、日中は家にはだれもいない。発見される可能性は低い。昨夜はうまく乗り切った。 「クローゼットに入っていろと言い残してあるのを、たぶん、律儀に守ってくれるだろう」  万が一親に部屋に入られても、クローゼットの中まではのぞくまい──そう念じつつの登校であった。
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