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十メートルほど離れた細い道路の真ん中。軽自動車がやっと通れるほどの幅の道路の上、一メートルほど空中に、なにか黒い渦のようなものが浮かんでいた。
街灯はあるが、この場所は暗がりで見えにくい。目を細める三人。
「でたか──」
正体を見ようと、それぞれスマホのレンズを向ける。撮り逃さないよう、動画モードに切り替えた。
近寄ってきたら直ちに逃げられるように、撮影しながら器用に自転車の向きを変えた。
「まさか本当に現れるなんて……」
灯雅はつぶやいた。
渦は暗く、その正体は近くで見てもよくわからない。撮影するにしても、光量が足らなくて、スマホの画面に映るそれは肉眼で見るよりももっとわかりづらかった。
「もっと近づくか……」
梅山が汗でずり下がった眼鏡の位置をただし、すり足で忍び寄る。
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