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そのあとについて、灯雅と天岡もおそるおそる近づく。
ぐるりぐるりと、ゆっくりと回る渦。立ち上る煙が微風に吹かれているようにも見え、超自然的な現象のようには見えない。すぐにでも消えてしまいそうな様子だった。
そのとき、予想外のことが起こった。
渦の中心から、生白い人間の腕がにょっきり生えてきたのだ。腕は振り回され、なにかをつかもうとするかのように手が空気をかく。が、そんな細かいところまでじっくり見ている余裕などない。
「うわあああ!」
三人は悲鳴を上げた。乗って逃げればいいものを、動転して自転車を放り出して逃げだした。
後ろを振り返ることなく、できる限りその場から離れようと、全速力で駆けた。
息が上がり、足がもつれそうになっても走り続けた。
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