第1章

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 僕の住んでいた村は、深い緑に包まれた山の麓(ふもと)にあった。山の周辺には、湖も在ったし、まだ当時子供だった僕は、数人の友達と一緒に大自然に恵まれた環境の中で、毎日、日が暮れるまで遊んで、楽しい毎日を過ごしていた。  ある日、僕は、風邪をひいてしまって小学校を休んだ。 「ちゃんと、お薬飲んで、しっかり栄養を取って大人しく寝ているんだよ!」  お母さんは、何度も僕にそう言い聞かせて、先に農作業に出ていたお父さんの手伝いをするために、朝、8時くらいに家を出ていった。 「今日一日で治すだぁよ、太一郎(たいちろう)!」 「分かったよ!大人しく寝ているよ!」  僕は、布団の中でもぞもぞしながら、早く一人になりたかった。理由は、もちろん一人で、テレビを見たり、ゲームをしたり、お昼用にお母さんが作ってくれていたおにぎりと、豚汁を好きな時に好きなだけ食べたいからだった。 「風邪をひいて学校を休む日は、我々子供にとって天国である!」  なんて、よく仲間たちと、たまには、風邪でもひかなきゃ、息抜きが出来ない!って変な暗黙の了解のような認識が、しっかりと出来ていた。  午前10時。僕は、しばらく眠ったあと、おしっこがしたくなって目が覚めた。 「しばれるなぁ~、小便が近いよ!」  僕は、茅葺(かやぶき)屋根(やね)の家の外にあった便所まで、寒気と闘いながら歩いて行き、我慢して、膀胱(ぼうこう)がはちきれんばかりに溜まっていた小便を時間にして一分間以上かけて、しばれる身体を、再び外気にさらしながら、今度は、小走りで家の中まで戻った。  季節は、二月。北の国の冬は、まだまだ寒さが、身にこたえる。 「ゲームでもやるかぁ……」  僕は、持っていたポケットゲームの中から、買ったばかりのドンキーコングを選んで、布団の中で、肘(ひじ)をついて、ドンキーコングに夢中になっていた。 「な~ん、飽きてしもうた……」  一時間くらい、ポケットゲームで遊んでいた僕は、風邪薬のせいか?少し、頭がボーっとして、ゲームになかなか集中できなかった。 「おにぎり、おにぎり」  僕は、台所の卓上に置いてあった特大のおにぎりを、一つ手で掴んで、口を大きく開けてムシャムシャと食べ始めた。 「ああ、うんめぇ……」  一個目のおにぎりの中の具は、当たりだった。 「鮭だぁ~、ラッキー!」 「とすると、残りの二つは、一つが、ネギ味噌で、もう一つは……」
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