第1章

3/13
前へ
/13ページ
次へ
「梅だろうなぁ~!」  とにかく、一個目から大当たりの鮭を引いてしまった僕は、その特大のおにぎりを頬張りながら、次は、何をして遊ぼうか?それだけを考えていたような気がする。  テレビを見ていた。  なんだか、あまり面白くない。 「そろそろ、寝てないとお昼には、お父さんもお母さんも帰ってきよる」  僕は、再び布団の中にもぐりこんで、大きく息を吐きながら枕に頭を乗せて、しばしの間短い眠りに就いた。 「太一郎!お利口さんにしていたか!?」 「うん……あっ!お帰りなさい!」  お父さんとお母さんが帰ってきた。僕は、しっかり大人しく寝ていた演技を続ける事にした。 「父さんと母さんは、母さんが朝こしらえてくれた弁当があるけぇ、お前は、おにぎりと豚汁を、しっかり食べて栄養つけんとぉ!」 「うん、分かっとるよ!」  僕は、内心ほくそ笑みながら台所へ行って、お椀いっぱいに豚汁を注いで、卓上に置いてある、おにぎりの席に座った。 「いただきま~す!」  富山県のお米は、とても美味しくて僕は、たまさかに、お母さんが握ってくれる、この特大おにぎりが、大好きだった。 「ゆっくり、よく噛んで食べんしゃいよ!」  お母さんは、僕にそう言ってから、右手を僕の額にあてた。 「あ~れ、まだだいぶ熱があるねぇ!ちゃんと、寝とったんかいな?」  確かに、ずっと頭がボーっとしているような感覚は、消えていなかったけど、しっかりと養生していなかったことは、気付かれては、いけないと自分に言い聞かせていた。 「夕方には、もどるけえ、しっかり寝とけよ!」  お父さんが、そう言ってお母さんと一緒に、また作業に出ていった。この時期は。雪も残っているから、ビニールハウスや温室(おんしつ)栽培(さいばい)なんかで、生計を立てている事くらいは、一人息子として知っていた。  昼ごはんの後に飲んだ風邪薬が、効いたのか?僕は、夕方までぐっすりと眠って、気が付いたら、お父さんもお母さんも帰ってきていて、お母さんは、台所で晩御飯の支度をしていた。 「おう、起きたか!太一郎!」  お父さんが、目を覚ました僕に気付いて、声をかけてきた。 「あ~、よく寝た!だいぶん良くなった気がする!」  さっきまでの、気怠さや、寒気、頭痛が、軽くなっていた。 「お父さん、僕もそろそろ農作業手伝いたいよ!」  僕は、汗で少し湿ってしまった下着を、着替えながらお父さんに話しかけた。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加