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「それで、賃貸に出していた前の家の契約が再来月に切れるから、そのタイミングで戻る事にしたんだ」
「なんともタイムリーだな。ところでその家はどうするんだ?」
「売りに出そうと思っている」
それを聞いた俺は、疑念に満ちた声で突っ込みを入れた。
「……売れるのかよ? あんな田舎の、無駄に敷地が広い家なんて」
「やってみなければ分からないだろう? 取り敢えずそういう事になったから。正確な引っ越しの日程が決まったら、また連絡する」
「分かった。ちゃんと病院の紹介状とかも準備しておけよ? それじゃあな」
そこで話は終わり、俺がスマホを耳から離すと、家族全員が顔を揃えていたリビングで電話を受けた為、この間黙って俺の台詞を聞いていた佳代が、確認を入れてきた。
「太郎、お義父さんの話は何だったの? 前の家に戻るとか、家を売るとか言っていたけど」
「どうもこうも……。猫も居なくなったし、通院とか不便だから前の家に戻るとさ。賃貸契約が切れる、再来月以降の話らしいが」
「そうなの……。でもそもそもミミとハナの為に、田舎暮らしを始めたようなものだって言っていたものね……」
俺が肩を竦めながら教えると、佳代がしんみりとした口調で応じる。するとここで、翔が口を挟んできた。
「パパ、おじーちゃんのうちはどうなるの?」
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