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「……うん。あのね、おじーちゃんのおうちを売るってきいたの。ほんとう?」
そこで少し相手の言葉に耳を傾けた翔は、無言で頷いてからとんでもない事を言い出した。
「あのね、それならそのおうち、翔に売って?」
「はぁ? ちょっと待て、翔。お前、何言ってるんだ?」
俺は思わず室内に足を踏み入れながら問いただしてしまったが、翔は電話越しの会話に夢中になっているのか、俺を綺麗に無視して話を続けた。
「りゆう? だってほかの人に売ったら、お庭がなくなっちゃうかもしれないよね? そうなったらたいへんだよ! ミミとハナのおはかは、翔がまもる!」
「…………」
その力強い宣言を聞いて、俺は佳代と顔を見合わせた。しかし次に翔の口から出てきた台詞に、激しく脱力する。
「あ、だけどローンと、しゅっせばらいでおねがい!」
「……いきなり何を言ってる」
「お義父さん達に、散々ローンを組んでいるのかって言われそう……」
「大きくなったらサラリーマンじゃなくて、クリエイティブなしごとをすれば、いなかくらしでもだいじょうぶ!」
「だから、何の話をしている……」
「『クリエイティブ』って……、本当に何の事か、分かって言っているかしら?」
「え? うん、分かった」
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