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「やってみなければ分からないだろう? まだ小学校に上がったばかりの翔がクリエイティブな職業を目指すと言っているのに、お前は相変わらず発想が貧困だな」
呆れた口調で言われたが、俺の方が心底呆れとるわ!
もう何も言う気にならなかった俺は、半ばなげやりに言葉を返した。
「ああ、そうだな……。日本には結構人間が居るし、ひょっとしたら父さん以上の物好きがいるかもしれないからな……」
「じゃあそういう事だ。翔に言っておいてくれ。俺は寝る」
「……全く」
嫌みが全然通じていないし……。
自分が言いたい事だけ言ってあっさり通話を切った相手に、心の中で悪態を吐きつつ、俺はキッズケータイを耳から離して通話を終わらせた。
「パパ、おじーちゃん、なんて言ってた?」
期待に満ち溢れた表情で、こちらを見上げてくる翔。
俺は翔にケータイを返し、憮然としながら望み通りの答えを返してやった。
「あの家は売らずに、翔が大人になったらくれるそうだ」
「やった! じゃあがんばって、クリエイティブなおしごとする!」
途端に上機嫌で叫び、ウキウキとキッズケータイを片付ける翔。その様子を見ながら、俺と佳代は囁き合った。
「……絶対、分かって無いよな」
「それはともかく、あそこを空き家のまま、放置しておくの?」
「賃貸に出すそうだ」
「………………」
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