出会い

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出会い

 大学が冬休みに突入し、一人暮らしのマンションから何ヶ月ぶりで帰省すると、実家のリビングの片隅に、見慣れない物体が存在していた。 「ただいま…………。え? 何だ? この毛玉」  それに近づいて上から覗き込むと、ただの物体では無くて生物だった。 「……猫、だよな?」  ふかふかのタオルケットを内側に敷いた籠の中に、微動だにせず、身を寄せ合う毛玉が二つ。纏めて両手ですくい上げられそうなサイズの子猫が二匹、顔を上げ、その小さな目で自分を凝視しているのに戸惑う。 「太郎、お帰りなさい。お茶を淹れたから飲まない?」  そこで母さんが現れたのを幸い、早速事の次第を尋ねてみた。 「母さん、この猫はどうしたんだ?」 「一昨日、お父さんが病院で貰って来たのよ。患者さんのお宅でたくさん産まれて、貰い手を探していたんですって」  耳鼻科の開業医である父は、確かにこれまでにも付き合いのある患者さん達から、色々と貰ってはきているが……。 「確かにニャンコが死んでからは、うちに猫はいないけど……。どうして一度に、二匹も貰ってくるかな? 一匹で良いじゃないか」 「二匹だと、すっきり収まるからじゃない?」     
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