SS 「溺愛と日常」

11/57
7733人が本棚に入れています
本棚に追加
/475ページ
「あー今日会えると思わなかった。まじで嬉しい。あ、もしかして気ぃ遣わせた?」  気を遣いました。  そう言うわけにはいかないから、苦笑を返すにとどめておく。  仕事の後どこかで待ち合わせようとしたら水落が国税庁前まで来てくれたので、すぐ合流できた。駅まで歩きながら、水落は上機嫌で終始にこにこしている。  水落はこうして笑っていると毒気がなくて、何なら爽やかな好青年くらいに見える時がある。笑顔や寝顔が幼く見えるタイプだなと思う。実際、子供のようにはしゃぐ時もあって、見た目に反してギャップがある。 「水落さんこそ…。僕はたまたま仕事の空きができたから良かったですけど、無理して予定変更してないですか? 特捜部は忙しいからそうそうオフの時間が取れないはずですけど」 「あ、予定? まーどうでもいいのが入ってたから別の日に変えたけど、それくらいのことしないと宝来くんと予定合わせらんないからさあ」 「本当にどうでもいい予定ですか? 仕事での約束ですか?」 「あーまあ、ちょっと政治家と会う予定だったけど」 「政治家!」  大物ではないか。友達の約束をキャンセルするのとはわけが違う。
/475ページ

最初のコメントを投稿しよう!