SS 「溺愛と日常」

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「男同士で過ごすならそれで全然楽だけどな。女は不満だろ。そんなデートばっかりしてたらそりゃもっといいとこ連れていけってなるわ」 「でも流行の店とか場所って混むじゃないですか。疲れるし行きたくないっすよ」 「その疲れさえも楽しさに変わるのがデートじゃねえの」 「そうっすか…」  そこで会話は終了した。  聞き流していたはずだが、いつのまにか聞き耳を立ててしまっていた。  そして、今までの水落なら『あーわかるわ。いちいちムード作りとかお膳立てとかまじでいらねえ。何でそこまでやんなきゃいけないの。面倒くせえ』と愚痴っていた側に共感していただろう。  だが、今は違う。まったく違う。真逆のことを思った。  え、ムード作り大事だよね? 男友達と過ごすのと変わりないなんてデートの意味あんの? どうせなら恋人同士としての時間、空間、とにかくすべてにおいて好きな人と過ごすことを満喫したいじゃん。ホテル行ってやることやったら速攻帰りたい? そんなの風俗でいいじゃん。そっち行けよ。違うじゃん。セックスできたらそれで満足とか、それ以外の時間は束縛されたくないとか、そんなこと思う時点で相手のこと本気で好きじゃないってことでしょ。本気で好きだったらそんなこと考えもしない。
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