SS 「溺愛と日常」

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「男なんて単純なんだから、よっぽど自制心あるとか草食系でもない限り、本気で好きな女は離さないようにガンガン攻めるものなの。結婚願望ないって言いまくってたくせに、好きな子がふり向いてくれた途端速攻結婚決める男いるじゃない? それのわかりやすい典型。所詮男ってその程度の単純さなのよ」 「なるほどねー…」  なるほどねー…。一緒になって感心してしまった。  つまりそこまで本気でない相手には余裕でいられて、束縛なんかもしなくていられるけど、本気の相手には猪突猛進する。それが全般的な男の特徴ということか。  ということは、水落もそれなのではないか?  彼は一般的な人間と違うというか、変わっているというか、特殊というか、そんなふうに見えるけど、実はそのへんの男と変わらない部分が根底にあるのではないか。  じゃあ水落は普通の男なのか? 本人もそう言っている。  いや。いやいや、普通ではない。自分で断言するところがますます怪しい。だって『俺詐欺師じゃないから!』と自ら率先して言う詐欺師はいないだろう? 普通かどうかは人が判断するものであって、自己判断できるものでもないし、自ら吹聴するのはもっと違うだろう。
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