SS 「溺愛と日常」

10/57
7747人が本棚に入れています
本棚に追加
/475ページ
 それでも水落はおそらく、普通の部分もあるということではないのか。今の話を聴いてそう思った。  そして確実にわかっていることは、水落は宝来にのめり込んでいるためガツガツしているということだ。  わかっていたことだけど改めてその結論が導き出されたところで、携帯が連続してメールを受信した。  『会いたい』『めちゃくちゃ会いたいよ』『今週いつ会える?』  水落からだ。この人はいつ仕事をしているのかと思うほど日中であってもまめに連絡してくる。これで特捜部のエースとして実績を叩き出しているのだから感心しかない。やはり仕事ができる人というのは時間配分が巧いのか。あれこれ手を回しつつどれも処理できているのだろう。器用な男なのだと思う。  とりあえず後で職場に戻って予定を確認した上で返信しよう。これだけ会いたがってくれているのだから、彼のためになるべく予定を合わせたい。もちろん、宝来だって愛されていることは嬉しいと思うし、水落に会いたい気持ちがある。  ただ、会えばすぐに抱かれる羽目になり、その後何時間も朝まで解放してくれないので、それはどうかと思う。  それについて物申したところで、あの口達者な男に『え、でも宝来くんもめちゃくちゃ感じてるもんね?』などと何だかんだ言いくるめられるから結局聞き入れてくれないままだ。  まあ、もう、水落に逆らおうという気はなくしているから、いいけど。
/475ページ

最初のコメントを投稿しよう!