SS 「溺愛と日常」

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「あ、全然大したことないから。大臣クラスでもないし。時々飲み誘われるんだよ。俺が酒強いからってさあ」  大臣クラスとかそういうレベルの話ではない。水落が接触するからにはおそらく国会議員。となると向こうはスケジュールがぎちぎちだから簡単に予定変更していい相手ではないと思うのだが。 「水落さんはやっぱり交友関係が広いんですね…いや、大物とばかり接触してるんでしょう?」 「そうでもないって。あ、もう飯食った?」  躱された。  それはそうだ。いくら恋人同士であっても、仕事の機密をバラすわけはいかない。当然の反応だ。  お互いの仕事上仕方ないが、秘密が多すぎて神経を使うことが多い。  誰と会うとかどんな予定があるとか、仕事に関するものは一切漏らせないから、会話を濁すことが多い。  他のカップルはこういう時にどこまで相手に明かしているのだろうか、と気になったが、考えるまでもなくそんなカップルがそうそういるわけがないことに気づく。ライバル機関に所属している同士で付き合っているなんて滅多にないことだろう。 「まだ食べてないです」 「俺も。宝来くんの行きたい店行こう」 「でも僕の希望ばかりでは悪いですから…」
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