SS 「溺愛と日常」

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 自分の恋人は特捜部のエリート検事じゃなく、ヤクザやチンピラやヤンキーの類いではないかと疑いたくなる。  真面目な宝来は日常会話でそんな乱暴な言葉を口にすることはないので、心臓がばくばくしてしまった。 「…あの、興味があるとか好みとかそういう目で見ていたわけではなくて」 「うん、知ってる」 「そもそも僕は男性を恋愛対象とか性的な対象で見ているわけではなくて」 「うん、知ってるけど」  知っているなら、何故それ以上邪推する必要があるというのか。 「知ってるけど、何かすげえ嫌なの」  そうか…知っていても嫌なのか…。  それなら宝来はもうどうしようもない。水落は自分の嫉妬が過剰だと自覚しているからこそ『頭おかしいって思わないで』と断ってきているのだろうし、ということは宝来は弁解や否定をする必然性がない。  水落が自分の中でその感情をどうにか治めてくれるのを待つしかない。 「ねえ、こんな俺って異常? こんな彼氏嫌? 無理? 愛が重すぎる?」  愛が重すぎる。  確かに。  肯定しそうになって、慌ててフォローする。 「いやあの、嫌とか無理ってことはないですけど…。えーと…僕もなるべく他の人のことを見ないようにしますね」 「宝来くんすげえ優しい。天使みたい。もうますます好き」 「……」
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