SS 「溺愛と日常」

17/57

7781人が本棚に入れています
本棚に追加
/475ページ
 とりあえず、水落を否定することなく受け流す方法で事なきを得られたようだ。ほっとする。  宝来はこの一連の流れによって、学生時代にクラスメイトがやっていた恋愛シミュレーションゲームのことを思い出した。  キャラクターに見合った台詞を四択の中から選ぶゲームだ。ベストの選択肢ならキャラクターが喜ぶ。物語もハッピーエンドに進む。が、喜ばない台詞を選んでしまった場合、キャラクターは怒るとか哀しむなどの反応を示す。そして当然バッドエンドとかそのキャラクターとは結ばれないようなエンディングを迎えてしまう。  かける言葉の選択肢が、命取り。  今、まさに自分の対応力が試された気がした。  ここで反発して『そこまで嫉妬することないじゃないですか。異常だと思います』と言えば、水落はみるみる落ち込んでしまうだろう。意外に傷つきやすい。神経が図太そうだが、宝来に関してのみ繊細なガラスのハートを持ち合わせている。  そんな水落が正直面倒くさいが、愛されているのだからと思うようにしている。というか、思わないとやっていけない。 「実はさ、言ってないだけで『これ異常?』って思うような思考回路に発展することがあってさ」
/475ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7781人が本棚に入れています
本棚に追加