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「また会えたね。凄い偶然。俺たち運命で結ばれた二人かも!」  軽い口調で笑顔とともに仰々しい台詞を吐かれて、凍りつく。  どこが偶然だ。そんなわけがない。  今日宝来は地検に来ていた。先日同様長篠と調書について打ち合わせするためだ。  前回の説明を受けた上で調書を再度長篠がチェックし、更に詳細を問い合わせたいと言うので、電話では説明が難しく、再度赴いたのだった。  今回は修行のためか波瀬は同行していない。一人で説明するよう指示されていて、それでも自分の力が及ばない部分に関してのみ査察部に電話してこい、と命じられている。いつまでも親鳥は雛の傍にはいてくれない。だから宝来は長篠に問われた箇所の説明に悪戦苦闘していた。  至らないながらも長篠の優しさに助けられて、何とか資料とつきあわせて疑問点を解消していった。  長篠も心もとなかっただろうけど、波瀬が不在でもそれなりにいけることがわかって少しほっとしたようだった。  大体の質疑応答を終えたところで軽い世間話をしていたら、突然ドアが開いた。ノックもなく。  そしていきなり冒頭の台詞が告げられた。最も会いたくなかった男によって。
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