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『そう言う事になるね。僕は君と同じ時間を共有していない。だから、年月の進み方も君の世界とは異なるのだろう。幼子だった君はもう立派なレディ。しかし、こっちの世界では実は一年もたっていないのさ。』
俄かには信じがたいはずのその言葉に、私は何を言うわけでも無く聞き入った。
『そうだな……この世界は終わりという概念が無いんだ。それどころか、朝も夜も存在しない。君も不気味に思ったはずだ。でもそれは今は置いて置いておこう。その代わり、この街の住人は一人に一つだけ生まれ持ってこの店の時計に選ばれる。選ばれた時計が壊れたり、狂った時、直せなければここの住人は消えていなくなってしまうんだ。』
強いて言うならこれがこの世界で言う『死』というやつなのかもしれないね。と彼は少しだけ寂しそうな顔をした。
もう聞くな。
きっとそう言いたいのだろう。
それでも疑問を沢山抱えた私には意味をなさなかった。というか丸無視したのだけれど。
『本当に意味わかんないけど、とりあえずその時計制度?ってのはそれはこの街の人だけ?』
と首を傾げていると、彼はまた可笑しそうに笑った。
『ふふ、そうだよ。この世界はどんなに遠くに走り込んでも結局この街しか行けないんだ。結局この道に戻ってきてしまうから時計屋もここ一つだけしか要らないんだ。『時』を守るのも私一人で事足りる程しか人が居ない。君にとっては十分異世界だろう?』
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