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と、言うと彼は持っていた金具を机に置いた。
『さっきも言ったけれど、ここに違う人間が来るのは珍しい。だから住民は君を警戒して隠れてたんだ。その証拠に、君が見た街には誰もいなかっただろう?そっと窓の外を見てごらん。』
言われた通り窓の外を見やると、そこには遠目から、あるいは建物の影から私とトワを覗きみるかのような人掛けがちらほら見える。
不審物を見るような表情に、チクリと胸が傷んだ。
どこか懐かしいと感じたのは、自分に対する皮肉だったのかもしれない。
その目はまるで、井坂家で味わったものによくにいてたから。
ああ、だからあんなにも居た堪れなかったのだと納得する半面、なんで彼らはそんなに警戒する必要があるのだろうと私はまた首を傾げた。
次から次へと言葉をかけられて私の方は言いたくてもタイミングを逃し、言葉を紡げずに息が詰まってしまいそうになる。
『あぁ、話しすぎてしまったね。ごめんよ。けど言ったろう?この世界にはこの街の住人しか居ないって。なのに君は時計も持っていなかったから警戒されたのさ。』
透だって、家の庭に知らない子供が寝て居たら驚くだろう?と、彼は付け足した。確かにそんなことがあれば驚くだろう。
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