時計仕掛けの世界

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始まりがあれば終わりも必ず訪れる。それが意図する重さとは裏腹に、簡単に終わってしまう。 それは新しい『時』の始まりかも知れないけれど、終わった『時』は過去として記憶の片隅にしまわれていくだけで。 もう私は大事だったはずのその人達の声も、過去も朧気なモノに変わっていってしまった。 置いてかれてしまったあの日、私も死んでしまったのかもしれない。 悪意に気が付いたその日から、私はここに居る理由が無くなった。 それでも時が戻ればと。せめて気付く前になんて愉快で下らない腐りきった夢を捨てきれずにいる私に、現実は容赦なく罵声を浴びせる。 妄想が生み出したであろう冷たい声に、もう時を止めたいのは私の方だと笑い掛けた。 逃げた先に待ち構えていたのはやはり社会のゴミを見るような怪訝な顔と偽善者だけで。これに溢れてしまっている現状に私はもう耐えられない。 だからもう、迷わないで終止符を打つの。 もう飽き飽きしてしまったこの世界に。夢も満足に見れなくなってしまったこの物語に。きっと、意味が見いだせたらもっと違う末路だったかもしれないけど。 灰色がかったこの心には今更過ぎてもうなにも響かない。 代わりに笑っているのか、蝉の声が空に吹き抜けていく。それが私とはまるで正反対で少しだけ羨ましく思えた。     
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