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『あんた達は必死ね。』
何年も何年も土の中で、最期の数日間だけしか空を飛べないのだから。
『でも、もう私は充分なの。』
高層ビルの屋上。
なんて恰好の良い場所は学生の私には選べるわけもなくて。
代わり映えのしない学校の屋上のフェンスを乗り越え、淵に立つようにして身を任せた。
『さようなら。』
夏休みの真っ最中で部活も何も無い様な日だっていうのに、律儀に気付いた教師が走りつめて来た。
私がここに入る為に壊した錠は鎖と共に床に落ち、先程までは静寂を決め込むかのように息を潜めていたのだけど、教師たちが踏みつける度にそれは痛々しい悲鳴を上げた。
それが何だかあの家での私のように思えて、心も連られて軋む。
止めようと必死な声が、鎖の音がしなくなってからも響く。泣いているような声もして、その場にいた先生方はこれ以上ないくらいに動揺していた。
分からないよね。
先生方からしたら絵に書いたような優等生だったもの。
先生方には悪いけれど、もう遅い。
『有難うございました。』
後から掛けられる声でさえも不協和音のように頭の中で響き、どこか歪んだ音のように聞こえる。
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