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あの時と共通してるところがあるとしたら、それは嘘のように雲一つない空くらいで。
どこからともなく聞こえてくるいくつもの時計のような音が煩わしくて眩暈がしそうだ。
この場所は恐ろしい。
それなのにどこか懐かしく思えた。
無数に感じる視線が私に突き刺さって、今にも息が止まってしまいそう。時計の音に混じるようにして私の心臓の音が激しくなり、身体の中から掻き乱されていくように熱が汗となって溢れ出す。
飛び降りた時の不安感にそれはよく似ていた。
居た堪れなくてその場から駆け出した。しかし、街並みの奥に見えていた森の中に入れば数メートルもしないで元の場所に戻ってきてしまう。
何周も走り込み、ついには元の場所で転けてその場に座り込むことしか出来なくなった。地べたに座り込んでいる足が震えて、もう動ける気がしない。
恐怖のあまりか過呼吸のような状態になって、意識は格段に朦朧としていた。
街に戻されるだけじゃない、この街は明らかにおかしい。
何故こんなに視線を感じるの?
夕日が沈みかけて茜に空が染まっているのに、何故いつまでも夕日は動かないの?
空の色も、太陽の角度も何もかもがそのままで、時計の音以外は感じない。
いや……それより何で風一つ感じないのに私の髪やネクタイは靡いているの?
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