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淀みなく答えたマスターが、私の前へ静かにティーカップを出した。カップの中身は普通はミルキーな薄茶色だが、この液体は違う。
白みがかったピンク色だ。こんな色は
やはりここでしか見たことがないが、カラフルな金平糖のついた可愛らしいカップケーキとよく合っている。
ふわりと、紅茶が香る。
私は何の疑問も持たず、誘われるようにミルクティーとケーキを口にした。
日が暮れかかる時間まで、カフェに訪れた客は居なかった。
店を出ようとした私の背に、マスターが声をかけてきた。
「お待ちしていましたよ、本当に。ずっと。長く待っていました。あなたのお帰りを」
その言葉は、たしかに私の心と胸に引っ掛かった。
「それは……その言葉は、『来店した時の挨拶』ですよね?」
「そうでしたね。
──では、お気をつけてお帰りください。あなたはほんの少ししか魔女の血がないから、人でないものに惑わされやすい」
マスターの見送りを受けて、私はカフェを出た。
金のベルがカラカラ、という軽やかでどこか寂しげな音を立てる。
それが嫌に耳に残った。
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