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1、あたりまえ
目が覚めた。十二時か。また遅刻だ。
目覚まし時計はいつも役立たずだ。ちゃんと自分の仕事をやり遂げてくれ。
「あぁ…ぁ……ぁぁぁ…。」
いつもの朝だ。
自分でも何を言ってるか分からないが、言葉にならない言葉を漏らす時間が、毎日約三十分ほど続く。そんな朝だ。
むくむくと起き上がると、誰もいないリビングで水を一杯飲む。身体中に染み渡る音がする。
部屋は意外と綺麗だ。というより、ものが少ない。家具も必要最低限、服なんて同じ服を永遠と着回している。
「よし、いくか。」
遅刻してることなんて気にしない。部屋の端に放り投げられた服を救出し、着る。部屋干しの匂い。まぁいいや。
寝癖がひどい頭。まぁいいや。
洗顔は、歯磨きは。
「………まぁいいや。」
食パンを一枚口に押し込み、また水を一杯飲む。そして、コンビニの制服をカバンに詰め、家を出る。
外に出ると、息苦しい都会の空気を胸いっぱいに吸い込み、バイト先に向かう。
うん、いつも通りの朝だ。
「音也くん?君には記憶力というものが無いのか?毎日同じことを言わせないでくれ。」
「はい、すいません。」
これはまずいぞ、店長の顔がいつもより怖い。鬼のようだ。いや、鬼というよりだるまに近いか。
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