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1・山田家の日常
僕は幽霊が視える。それは嘘ではない。
僕の父、姉、祖父、つまり先祖代々、視える体質なのだ。なんでも、ご先祖さまが霊媒師だったみたいで、僕たちはその余った能力を僅かに受け継いだのらしい。
だから当然、この霊感一家の山田家長男である僕、山田太一もまた幽霊の存在を感知することが出来るのだ。この体質のせいで僕は長年、友人がつくれずにいた。周囲から見ればそりゃ「幽霊が視える変なヤツ」だからだ。
何もない(霊が潜んでいる)ところで叫んだり、驚いたり、ぶん殴ったり……そんなことをしていたら気味悪がられて仕方がない。
「お前は不器用すぎるんだ」
父、信一朗はそう言う。
「あんなもの、見てみぬふりして素通りしてればそれでいいんだよ」
簡単に言うなよ、クソ親父。
父の目は僕より感度は良くないらしい。いや、視力の問題もあるだろう。て言うか、もう歳も歳だから老眼なんだ。ほぼ視えていないに等しいんじゃないだろうか。
「太一は繊細なんだろうなぁ……俺の若い頃にようく似てる」
祖父、通はそう言う。
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