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仕方なく、祖父母が上手く対応して追い払ったらしいが……僕も確か会ったけれど、その子供の怪我というのは小さな擦り傷程度のものではなく、身体の右側全ての損傷が激しく、恐らく事故で亡くなった子供だった。
姉の視界は僕らよりも少し違うらしい。彼女の視る世界には、そういった恐ろしいものが排除されているのだと僕はそう考えている。
だから、姉は誰とでも仲良くなろうとするのだ。祖父をはじめ、祖母、父、僕は幽霊を視るとそれが何者であるかが分かる。例えば僕なら、亡くなった当時の格好であるとか、強い思念を抱いた真っ黒な塊だとか、そんな風に視える。祖父と父がどこまで鮮明に視ているのかは知らないが、僕と似たような視界であると思う。
だから姉への対応には祖父も祖母も父もほとほと困っていた。勿論、一番困っていたのは母なのだが……まぁ、母は母で僕の面倒に追われていたらしい。
「あー、そんなこともあったっけねぇ」
過去を振り返ってみると、姉は呑気にそう言った。
父が出た後は、母も週2で勤めるパートへ出かけた。僕は今日は一限がないからのんびりしているけれど、姉はどうなのか。こいつは未だスウェット姿で、腹を掻きながらテレビを観ている。
これで21歳の女子大生というのだから、世の中には詐欺師しかいないんじゃないかと僕は人間不信をむくむく成長させていた。
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