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目の前で、僕を指差して笑う女が現れた。白いTシャツに、ワイドパンツ……いや、ガウチョパンツ? を穿いた長い黒髪の女。
最悪だ……
僕は頭を抱えた。一方、横では陽介が僕と彼女を交互に見ている。
「誰?」
訊かないで欲しい、という願いは叶わない。
「おや、君が太一のお友達? はじめましてぇ、太一のお姉ちゃんの山田真麻江でーす」
「うっそ、姉ちゃんいるのか、お前!」
陽介の反応はものすごくオーバーだと思う。だけど、そのオーバーリアクションに姉は気分を良くする。今朝に般若顔で僕の鳩尾を殴ったゴリラとは思えない完璧な笑顔を見せて。ちなみに、どうでもいい説明だけど姉は機嫌がいい時は僕のことを「たいちゃん」と呼ぶことがある。
「太一に友達が出来たって聞いたから見に来たの」
「尾行けてきたの間違いだろ……」
なんでよりによってこいつが来るのか。何しに来たのか。て言うか、この短時間で着替えて化粧して来るとは……姉はもしかすると化物の類なのかもしれない。
「俺、浅間陽介って言います! えと、お姉さんはいくつですか? 歳近そうっすね!」
陽介は陽介で、年頃の男子学生らしくキラキラと目を輝かせて姉に話しかけている。なるほど……こういう人懐っこさが大事なんだろうな。まぁ、彼も今は彼女いないからあんまり参考にはならないな。
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