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3・電柱にご用心
「さすが太一の姉ちゃんだなー」
陽介は感心するように言った。早くも姉の奇行に理解を示すとは、心が広すぎやしないか。この順応力は僕も取り入れたいところだ。
だって、血の繋がった家族である僕でさえ姉の行動がいつまで経っても理解出来ないから……
僕は唖然としたままでいた。姉の腕に抱かれる黒い影を視る。
なんだろう、あれは。片手で抱けるくらいに小さなもの。だとしたら、人ではない。子供でもなさそうだ。動物の可能性が高いか。そこまで思いつくまでは鈍くなった脳みそが回転し始めていた。
「陽介……多分、あれ、犬か猫だよ」
「あれ、ってつまり……真麻江ちゃんが抱いてる?」
「そう。僕にはあれが黒い影に視えるから、ちょっと判断が難しいんだけどさ」
「さっき言ってたやつか」
察しのいい彼に、僕はこくりと頷いた。途端に陽介が「うはぁ」と顔をしかめる。
「でも、真麻江にはあれが普通の犬か猫に視えてるんだよ……あいつ、いつもああなんだ」
僕の疲弊した声に、陽介は同情の目を向けてきた。そして、その目を姉にも向ける。
「でも今のところ真麻江ちゃん、何ともなさそうだなー……うわ、やべぇ、こっち来る」
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