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表示は母だった。なんだろう。おつかいだろうか、考えていると電話の向こう側で母の声が響いてくる。
『太一! 今すぐ帰ってきて!』
「え?」
『早く! お母さんだけじゃ対応出来ない!』
おつかいどころか突然の帰宅命令に驚いてしまう。
なんだろう。今、家には母しかいないのだろうか。いや、祖父と姉が将棋で遊んでいたんじゃないか? それに、母だけで対応出来ないということは……勿論、霊関係だろう。僕は駅に向かって足を速めた。
「分かった。今から電車に乗るから、ちょっと待ってて……てか、本当に何があったの?」
地下鉄のホームへと走りながら問う。すると、母はあたふたと落ち着きなく言った。
『ま、真麻江ちゃんがね……あの、なんか、彼氏を連れてきたの』
「は?」
僕の足が階段を下りかけて止まる。
「え? なんて?」
『だから、真麻江ちゃんが彼氏を連れてきたの!』
「………」
さて、ここで僕は二つの可能性を脳内に浮かべる。一つは真麻江の彼氏が生きた人間であるということ。二つは死んだ人間であるということ。
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