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「大事な話?」
「そう、大事な話」
「なにそれ」
「注意事項的なやつだ。お前にも話さないといけないから、早く起こしてきなさい」
ふんわりとした説明だが、父の顔には一切の柔らかさはなかった。それが意味するのは山田家特有の事情のせいだろう。
僕は寝癖の立った頭を掻いて、仕方なく席を立った。居間ではジジババの喧嘩が今やヒートアップしている。それを横切り、居間から出てすぐの二階へ繋がる階段を上った。
二階は部屋が六つ。両方の突き当りのうち一方が姉の部屋である。念のため、扉を軽めにノックした。
「姉ちゃん、起きてる? 父さんが話あるからさっさと降りてこいってさ」
「………」
扉に耳を当ててみるも返事はない。寝てるに違いない。
「おいコラ、真麻江。起きろ」
今度は乱暴に拳を打ち付けてみる。
「………」
しかし返事はない。さすがは姉だ。一階から響いてくる祖父母の喧嘩でも起きないし、僕のノックでも起きないとは。僕は勝手にノブを回して、ひょっこりと顔を覗かせた。
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