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「さぁ。近所に悪霊を見つけたとかじゃないの?」
「あー、そうかもね……別にさぁ、あたしたちも大人なんだしそんな忠告、もうしなくていいのにねぇ」
姉は楽観に言うと「ふぁぁぁ」と欠伸をした。階段を降りる。
「まぁね……僕ももう成人だし、それくらい自分でどうにか出来る……けど」
しかし、この姉の場合はそうじゃないかもしれない。父が気にかけているのも無理はない。
祖父は若い頃が僕とそっくりだって言っていたけれど、どちらかと言えば祖父に似ているのは姉だ。真麻江の方が、僕よりももっと強くはっきりと視えるらしいから。ただ、本人はその自覚がない。
ダイニングに行くと、ようやくジジババの喧嘩がおさまっていた。父はもう朝食を済ませてスーツの上着を手にしている。
「おはよぉ」
山田家長女のようやくの登場に、家族全員が揃ってため息を吐いた。
「おはよう、真麻江。それと、太一。大事な話がある」
父はネクタイの位置を正しながら神妙な顔を向けた。
「昨日、五丁目の内川さんから聞いたんだが、電柱にぶつかって事故を起こした青年が最近亡くなったらしい。花束が置いてあるから、絶対に近くを通らないこと。それと、駅の近くに怪しい黒い影があったから、そこも注意すること」
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