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「駅ってどの辺の?」
父の話の間に、僕は咄嗟に割り込んだ。駅と言えば、この辺りだと地下鉄しかない。最寄り駅なら要注意だ。
「あぁ、甥浜駅の……花屋が近くにあったよな。あそこで見かけた」
「えっ」
僕は思わず声を漏らした。ごくりと唾を飲み込む。すると、僕の様子に父がすぐさま眉をひそめた。
「どうした」
「いや……友達の家が近くに……」
しどろもどろに言うと、父は目を丸くした。キッチンでは母が皿を割る。居間では祖父母が揃って口をあんぐり開けている。姉はとっくにダイニングテーブルに座って、冷めたハムエッグをむしゃむしゃ食べていた。
姉以外の全員に衝撃が走る。
「嘘、だろ……太一、お前、友達がいたのか……」
「え? 生きてるお友達でいいのよね? 太一、どうなの」
「生きてても死んでても友達は友達だろう」
「そうそう。どっちでもいい。要は友達が出来たこと自体が大事件」
口々にそんなことを言われる。僕は顔を両手で覆った。
「やめて……ほんと、そういう反応いらないから……勘弁して」
「大事なことよ、太一。お母さん、死んだお友達連れて来られても視えないんだからね!」
「なんだろう……母さんが一番酷いことを言ってる気がする……」
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