2・真麻江の視る世界

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2・真麻江の視る世界

「あのね。きょう、まさえね、あたらしいおともだちができたのー」  小学一年生の姉が家族全員に自慢していたのが最初のような気がする。 「つうがくろのでんしんばしら、あるでしょ。あそこでいつもじーっと、こっち見てる子がいてね、その子、みっちゃんっていうんだけどね」  そのみっちゃんというのは、女児の幽霊というわけではない。念のため、父が確認に行ってみると、そこには黒い影のような成人男性(年齢不詳)が目をぎょろつかせて立っていたらしい。どうして姉が「みっちゃん」などと呼んでいたのかは分からない。訊いても「なんか、みっちゃんってかんじだったから」と意味不明な理由を述べたという。  それから、通学路の電柱には目を向けるなと父は姉と僕に言い聞かせた。  次に、姉が友達になったのはやはり通学路の、溝にいたという小さな男の子。同年くらいで、その子供はしくしく泣いていたという。 「溝にはまってたから助けてあげたんだー」  姉が言うにはそうらしい。怪我をしているから手当をしたいと姉はその男の子を家に連れてきた。母には視えない子供だった。     
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