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――しかし、退屈しない。
思いのほか良い拾い物をしたと、思って自然と笑みが零れた。
アリーシアのことだ。
最初は、ただティアトリード侯爵への対抗札として手中にしておこう、というだけの心算でしかなかったが……なかなかどうして、この者は面白い。
良い退屈しのぎになる。
そのうえ、ずっと見ていたいという欲求までもが湧いてきた。
――まさか、あんなにも美しい男だったとは思わなかったしな。
初めて会った時に、アリーシアには少年向けの軽装が似合いそうだと思った。
だから、着替えを与えようとした際、自然と小姓の装束が思い浮かんだ。
官吏ほど堅苦しくも仰々しくもない小姓の装束なら、あんなにも細身で華奢な体躯にも、きっとよく似合うだろう。
果たして、私の目論見は見事に的を射抜くことになり―――。
小姓の姿に着替えたアリーシアは、まさに風薫る季節の新緑のような清々しい色気を纏い、私の前に立っていたのだ。
その美しさに、思わず目を奪われた。
さっぱりと化粧の落とされた顔には、明らかに女顔ではあったものの、成長期を終えた少年の持つ涼やかな凛々しさが感じられた。
ざんばらだった髪も、カシムの手によって、耳の下あたりまでの長さにすっきりと切り揃えられている。
豪華な装いと化粧でごてごてと飾り立てられた姿ならば、二十五歳という年齢相応にも見えていたが……今の姿は、二十歳前にしか見えない。せいぜい、見えて十七~八歳といったところか。
もともと童顔でもあったのだろうが、男にしては小柄で華奢に過ぎる体躯も手伝い、その纏う装束と髪の短さもが相まって、彼を年齢以上に幼く見せていた。
そして、その姿は、もはや到底、女性には見えなかった。
アリーシアが男であったこと、その事実を暴くのに、ついつい手荒な方法を取ってしまったことは否めない。
目を覚ました時の彼は当然、私の姿を見て怯えた。咄嗟に自分の置かれている状況が理解できなかったのだろう、あからさまに逃げようとする素振りも見せては、こちらと距離を取ろうとした。
そこを何とか落ち着かせようと、できるだけ穏やかに説明をし、当面の間は自分の“駒”でいてもらうことを納得させた。
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