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いたずらな彼女
人はなぜ眠るのか。
脳は疲れたからと言ってその体の持ち主に休むように命令を下し、倒れる。意識を手放す。その行為が今だに分からない。
意識を無くすということは、死んでいるも同然じゃないか。
そう、僕にとっては人間は毎日死んで生き返っている。そう思っている。
「そんなこと言ってもさ。寝るのはとっても気持ちいいことだし、健康なんだよ?」
目の前の彼女は右手に持った箸をくるくると回して、そこに付いていた汁を僕に飛ばしてくる。
「うん、健康……なんだとは思うよ。脳が決めていることだから。だからって寝なくてもいいと思うんだ。倒れなくてもいいと思うんだ」
「……んー。でもそうだね。もし脳の言うことを聞かずに働いてたりすると、『じゃあお前死んじゃえ!』って言って脳が機能停止するかもしれないね」
「それは怖い」
「だから先に倒れてた方がいいんだよ。寝なくても、寝転がっているだけでも違うって聞いたことあるよ。多分」
なんとも曖昧な言葉が返ってきた。
彼女はナルコレプシーという、いわゆる睡眠障害で、ほぼ毎日突然眠る。障害だというのに、彼女は眠るのは気持ちいいと言う。加えて、問題は何も無いようだ。
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