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「…で!気が付いたらアンデッドになってたって訳だ」
「いやぁー!何度聞いてもすごいッスね!先輩!」
後輩が感極まった様にカシャカシャと拍手する。照れるぜ。
「なぁー!俺なんか盗賊に追われて、うっかり崖っぷちからの転落死だもんよ。せめてコイツみたいに一矢報いてりゃなぁ」
そう愚痴るのは俺よりも少し先輩。元は行商人をしてたらしい男だ。
「けど、そしたら成仏して今こうして会えなかったかもしんないじゃないッスかー」
「まぁなぁ。ソレが良い悪いは別として、こうしてまた飲んで話せるってのはいいよなぁ」
「僕なんかただの餓死ッスもん。先輩達みたいな武勇伝とか何も無いし」
「それでも生前の記憶があって自我があるじゃねぇか。俺ら以外の骸骨は皆、ネクロマンサーに操られるだけの傀儡だぜ?」
そう。ここにいる三人は俺を含めて全員、骸骨だ。
あ、冒頭にある通り、俺はアンデッドになりました。
んで、今は魔王軍の骸骨兵団『スカルジャー』の一員として戦ってる。
明日は休みなんでスカルジャーの中で話が出来る奴らと飲みに来たって訳だ。
「ソレ最初聞いた時はマジでビビったッスよ!僕、他の骸骨も生きてると思ってたッスからね!」
「骸骨は生きてねぇよ」
「言葉のアヤじゃないッスか!話の腰を折らないでほしいんスけど!」
「あー、悪かったって。ほら、俺のツマミやるから」
先輩が皿に乗った肉を後輩の皿に移す。
「わーい!あ、それでッスね。普通の骸骨は自分で動く事も、ましてや喋る事も出来ないって聞いてマジでビビったッス」
「俺らも思ったなぁ、ソレ」
「しかも俺なんか見た目から違うからなぁ」
「先輩、黒いッスもんねー。僕なんかは逆にカッコイイと思うんスけどね。何かいかにも魔族!って感じじゃないッスか」
「何か厨二病みてぇじゃん…」
「えぇー!いいじゃないッスかー!こう『闇に染まりし我が身の呪いの剣を受けて見よ!』みたいな!」
「完全に厨二病じゃねぇか!」
テーブルに乗り出して後輩の頭を叩く。
「ちょ、先輩!頭もげた!」
「あ、悪い」
「あーもー!すんませーん!拾ってもらえますー?」
コロコロ転がる頭を首無し骸骨になった後輩が追う。
どうやら隣のテーブルの下まで転がったっぽい。
ホント、すまん。
俺はせめてものお詫びに、後輩の皿にこっそりツマミを移してやった。
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