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僕はその後、祖母たちに発見された。
先にあのハサミ地獄を脱出したお兄ちゃんが大人を呼んできてくれたのだ。
僕は何度も皆に自分が見たものを説明したが、はぐれてしまった恐怖で怖い夢を見たのだと言われてしまった。
いとこのお兄ちゃんは、なかなか草むらから出られなかっただけで別にハサミなんて見ていないらしかった。
その翌日のことである。
そういえば...と近所の人が僕を見つけたときに足元に落ちていたというものを持ってきた。
それは錆まみれの相当古そうなハサミで持ち手に赤茶色の布が巻いてあった。
祖母が、「これは裁ち鋏と言って布地の裁断に使うのだよ、大きくて切りやすいんだ」と教えてくれた。
器用な祖父が裁ち鋏の錆を落としてきれいにすると、銀色に光るその刃はあの草むらで聞いたのと全く同じようにシャキンシャキンと鳴った。
それを聞いた僕はまた気を失ったらしい。
大人になった今も、どうしても忘れられない。
草むらからまたあの音が聞こえてきそうで、風が吹く度に息を殺してしまうのだ。
シャキンシャキン...
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