0人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ
あれ?間違えて通り過ぎてしまったのかと思い、戻ってみてもやっぱり見つからない。
「お兄ちゃん...なんで戻れないの?」
「うるさい!すぐ戻れる!」
いつも頼りになるお兄ちゃんが焦っているのを見て、僕は不安でいっぱいになった。
「怖いよ...」
乱暴に草をかき分けるので手がだんだん痛くなってきた。半分泣きそうになりながら前を歩くお兄ちゃんを追いかけた。
「待ってよ!お兄ちゃん!」
足がもつれてお兄ちゃんとの距離が開いてきた。
しかも腰の高さまでしかなかった草がいつの間にか胸のあたりまで伸びてきている。
お兄ちゃん!と叫んだが草がさわさわと鳴るだけでどこにいるのかさっぱりわからなくなっていた。
視界いっぱいに広がる緑、緑、緑。
パニックになってめちゃくちゃに走った。
「痛いっ!」
今までとは違う痛みに思わず手に目をやると、血がにじんでいた。
さわさわさわ...
シャキンシャキン...
最初のコメントを投稿しよう!