草むらの鋏

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シャキンシャキン... 草が風で揺れる音になぜか金属音が混じった。 音のする方を僕が振り返ると、遠くの草は緑色じゃなくて銀色に染まっていた。 それは巨大なハサミだった。 僕の身長ほどもあるピカピカのハサミが何本も生えていて、『シャキンシャキン』と不気味に音をたてながら風に揺れていた。 自分の周りの草を見ると、緑色から徐々に銀色へ、葉の先はどんどんするどく尖ってきた。 あのハサミに追い付かれたら僕の首は間違いなく シャキンと落ちてしまうだろう。 「うわああああ!」 僕は悲鳴を上げながら緑色が残っている草の方へとがむしゃらに走った。 草が顔に当たって血が出たけどかまわず走った。 シャキンシャキンと音が迫る。 僕はとうとう石に躓いて転んでしまった。 もうダメだ...そう思って目をつぶると、ふいに音がやんだ。 恐る恐る薄目を開けると目の前に誰かが立っていた。 お兄ちゃん!と顔を上げようとして、その人物が裸足であることに気づいた。 赤茶色の着物の裾から土にまみれた足が覗いている。爪が異様に伸びていた。 「...シャキンシャキン」 耳障りな掠れた女の声が頭の上から降ってきて僕は気を失った。
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