真夏の夜のP

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 チャップリンは、あまり人慣れしていないのか? はたまた虐待の過去があるのか? 僕に近付く気配はありません。  まぁ、僕は、見ず知らずの猫にちょっかいを出す程の愛描家ではないので、知らん振りを決め込みます。  すると、チャップリンは安心したのか、地面に落ちている何かをくわえ、街灯の範囲から離れようとします。  その途端、けたたましい目覚ましのように、鳴き声が響き渡ります。 ビィビィビィビィビィ!  蝉の鳴き声は、生命の必死さを訴えかけるように、夜の駐車場にこだまします。  チャップリンは、蝉の警告音に驚いたらしく、ビクッと体を震わせると、立ち止まって振り向きました。猫くんの口には、哀れな蝉が収まっています。  蝉くんは、何年も土の中で生活し、地上に出たら一週間しか生きない運命なのに、猫に捕まるとは不運です。  さて、不思議な事に、チャップリンの動きが止まると、蝉もピタリと鳴かなくなります。  そして、動き出すと、また泣きわめきます。僕は、まるで連動しているかの様な両者のコラボに、蝉にはお気の毒なのですが、笑ってしまいました。
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