プロローグ1「夢転生《ゆめてんせい》」

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夢うつつで、はっきりしない意識を無理矢理に呼び戻し、そしてゆっくりと起きあがった。 「 お姉ちゃん、早よ起きな!学校遅れるよ!」 ボクは、朝の気だるさを飲み込むように欠伸を噛み殺し、真横からかけられた声を目だけで追う。 そこに一人の見知らぬ、いや、 漫画などで見慣れた、妹像の少女が立っていた。 ここは... どこ....? あ、また... 変わった、のか... マジか... よ... 目覚めるとそこは、まったく見慣れない他人の世界になっていた。 「チーちゃん、お姉ちゃんは起きたー?」 「ママー、えり姉ちゃん、寝ぼけて起きてくれないの!」 そっか、この子は「えり」っていう名前なんだ。 「おはよう、もう起きるから... 」 彼女があまりにうるさいので、とりあえず、ボクはそう返事をする。 「みんなご飯もう食べたし、あとお姉ちゃんだけなんだからね!早く起きないと学校に遅刻しちゃうよ!」 そう言って、妹でチイと言う名の女の子は、強めに閉めたドアの音を残し、部屋から元気に出て行った。 ボクはこの現象を「夢転生(ゆめてんせい)」と名付けた。 発動条件は未だよくわかってない。 けれど過去の経験からすると、どうやら寝ている間に他人の意識に入り込んでしまうようだ。 朝起きると、他人を乗っ取ってしまっているのだ。     
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