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もじもじしながら答える高守。グラスに映る光は、秘ではなく高守を見ていた。
「ひめちゃんさ、この人どうなん」
「え?」
「高守って先輩、結構頑張ってるじゃん。もういいんじゃない?」
「何のこと、光君」
グラスに映る光と小声で喋る。
「どうしたの? なんか言った?」
高守に聞かれてしまったが、なんでもないと誤魔化す。
それからのレストランでは、映画の感想や趣味の話、次の予定の話から受験勉強の日程など、色々な話をした。
さぁ帰ろう、というところで高守が呼び止める。
「秘、ちょっと散歩しない?」
「え? いいですけど……」
駅とは逆方向に散歩する。
「今日は楽しかったね」
「はい、先輩といると楽しいです」
一呼吸おいて
「秘、敬語やめにしない?」
「どうしてですか?」
「秘には使ってほしくないなって……」
「使ったら嫌ですか?」
「うん、嫌」
「……どうして」
「秘が好きだから! 私の彼氏になってください!」
え。と秘の時が止まる。
高守が秘のことを好きだったことが、驚きで。だって同性だし……と思ったが、ふと思い出すと、高守は彼氏に、と言った。
そのセリフが秘をさらに混乱させる。
「ひめちゃん、どうするの」
ショーウィンドウに映る光が聞いてきた。
高守には、光の声が聞こえないため、告白の続きを始めてくる。
「返事は、さ。次の家庭教師の時にでもいいから聞かせてほしいな。……ぶっちしたら怒るからね、あははっ」
そう笑って、高守は走って行ってしまった。
「どうする?」
「どうって言われても、同性だし……」
「もう気が付いてもいいんじゃない? 秘。君は男だよ」
「光君、何変なこと言ってるの」
「変な事じゃないよ。秘は男だ」
いつになく真面目に言ってくる光。
「そんなのおかしいよ! だって私は」
と、言いかけて止まる秘。
「私、は……」
何か言おうとする秘を待つ。
「私は……光君が好きなんだもん……」
「それでも君は男だよ」
「なんでそんなこと言うの? いつもあんなに一緒にいたがるじゃない!」
「高守先輩に告白されたじゃん?」
「それが、何? 先輩に告白されたから引き下がるの?」
「違うよ」
「じゃあなんなの!? 急にわけわからないこと言ってきて」
秘は男だ。そんなことを言われて受け入れることなんてできないだろう。
光が言い合いの中で、宣言する。
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