君は鏡なんか見ないと言ったけど

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「俺は、ずっと高守先輩が好きだから」 「え」  自分の告白直後に聞かされるとは思ってもいなかった。光は自分のことだけを見てると思ってた。鏡の中にいる光には、それしかできないのだから。自分の周りから離れられないのだから。  だから、光の思いを否定したくなっていた。 「鏡から出れないくせに、好きになったって仕方ないじゃん。光君が先輩を好きなら、私は先輩に近づかないよ。そしたらもう会えないもんね、いいの? でも鏡から出れないもんね」  秘は自分でも嫌なことを言っているとわかっているが、つい勢いに任せて言ってしまう。 「秘はまだ思い違いをしているよ」 「何が? 光君は私のいる場所にしか居られないくせに」 「だいたい鏡に他人が映るわけがないんだよ。ファンタジー漫画じゃあるまいしさ。いいかい? 俺は秘、君自身だよ」 「はぁ? じゃあなんでいっつも可愛いねとか言ってくるのさ。自分に言ってるとかキモくない?」 「そうだね、キモいかもしれない。けど、それを言わせてるのも秘だよ。自分自身を鏡の中に閉じ込めて、違うものになろうとしてね」  ショーウィンドウに向かって独り言を言っている不審者にしか見えない。  普段なら、気にして控えている行為だが、今はそんなことを気に留める余裕がないのだ。高守の告白を受けただけで、状況が一転二転三転と……。 「できてるじゃない……光君と話ができてるじゃない!」 「秘の自作自演だよ。今この会話をしてる時点で、気づいてきてるんじゃないの?」 「なんだよ、それ、何の意味があってそんなこと、しなきゃならないんだよ」 「女の子に振られたからでしょ? 騙されて、傷ついて、女の子に騙されないようになるために、自分が女の子になろうとしたんだよ。思い出しなよ。もう逃げるなよ」 ☆  秘。ではなく光の記憶に出てきたのは、一年前のことだ。ファミレスのドリンクバーで時間をつぶす女子高生二人。 「ねぇ美千(みち)~、光君どうなの? 付き合ってんの?」 「はっははは、なわけないっしょ。ただの財布。財・布」 「うっわ美千ちょー悪女! 学ばせて~」 「キャハハうっぜ、てかさ財布にされる方が悪いっしょ?」 「言えてる。で、その鞄どうすんの?」 「売る」 「いいバイト代になるねぇ」 「たりめぇっしょ。デートしてやったんだから、これくらいのバイト代は出して貰わないと」
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