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「終わったら、電話もらえる?」
「わかりました」
そう言った後で、恥ずかしくなってうつむいた。
「帰ります」
深くお辞儀をして、家に向かって歩き始めた。ひとみさんも、並んで着いてくる。私は、ひとみさんを見た。
「僕もこっちだから」
よく考えれば、毎日のようにコンビニへ来ていたのだから、近所に住んでいるのだろう。
話すわけでもなく、コンビニの方向へ並んで歩いていく。
昨日まで、こんな風にひとみさんと歩く光景なんて、想像もしなかった。
私の願いは、買い物に来てくれないかな? 程度だった。
ひとみさんは、私の持っていた印象よりずっと話しやすい。
会いたかった理由は、単純にカッコいいから見たいってだけだった。
今は、もっとお話ししたかった。
ひとみさんの声も話し方も、好きだ。
本当は、もう少し若いのかと思っていた。15歳も離れていたら、随分子供っぽくうつるんだろうと思う。
「ねえ」
声をかけられて、慌てる。
「君のこと、なんて呼んだらいい?」
「な、なんでもいいです」
「仲良くなりたいし、名前で呼ぶよ。律ちゃんて言いにくいから、呼び捨てにしてもいい?」
私は、自分の顔が真っ赤になったのを感じた。
「どうぞ」
うつむいた。
「かわいいなあ」
ひとみさんの言葉でさらに顔が火照る。
「律って本当にいい名前だね」
かわいいと言われたのが名前だとわかって、自惚れたことが恥ずかしく、これ以上ないくらい顔が熱くなった。
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